私は大学生のとき英文学科に在籍しており、卒業論文は英語で書きました。
ただでさえ大変と言われる卒業論文をさらに英語で書くだなんて、きっとものすごく大変なんだろうなと思っていました。
しかし実際にやってみると、たしかに大変ではありましたが思っていたよりもスラスラ書くことが出来ました。
書き始める前は多いなと思っていた規定の長さを、無事に書ききることができて自信もつきました。
- 英語で卒業論文を書くことが決まっている学校
- 卒業論文は書くが、日本語か英語か選択できる学校
- 卒業論文は必修ではない(書かなくてもいい)学校
さまざまだと思います。
しかし、英語で卒業論文を書くことができる学校であれば必ず教授がサポートしてくれるので、ぜひ英語で書くことにチャレンジしてほしいです。
私は今ふり返っても、英語で卒業論文を書いたという経験は本当に良かったと思うことばかりです。
この記事では、実際に卒業論文を英語で書いた私が、英語で卒業論文を書くにはこんなことをしたよという体験談をお伝えします。
「進学先を決めるにあたり、英語で卒業論文を書く大学にマイナスイメージがある」という高校生や、
「これから英語で卒業論文を書くことが決まっているが、書けるか不安」という学生さんは、ぜひ読んでみてください!
私が在籍していた英文学科での体験談なので、学校や学科によって違いがありますことをご了承ください。
英語の卒業論文で大変なポイントは2つ|読むことと書くこと
卒業論文を英語で書くには、英語で書くことだけでなく、英語で読むことも必要になります。
(日本語で卒業論文を書く場合でも、英語の資料を読むことがあるかもしれません。)
意外と見落とされがちなのですが、卒業論文執筆には、英語で読むことも重要です。
読むことと書くこと、それぞれ解説していきます。
テーマの決め方やデータの集め方については【すぐできる】卒業論文のテーマ決めに役立つ3選【英米文学科・英文学科】という記事もあわせてご覧ください。
わたしが卒業論文を書くときに知っておきたかった方法を書いていますので、これから卒業論文のテーマを決めるという方のお役に立つはずです。
https://eibungakka-mama.com/helpful-thesis-theme
英語で論文や書籍を読む
卒業論文と聞くと、パソコンに向かってひたすら論文を書くというイメージがあるかもしれません。
しかし、実際のところ書く作業が占める割合は全体のおよそ半分。
卒業論文の残り半分の作業は、専門家が書いた論文や書籍を読むことと、データ集めや分析です。
「え?他の人が書いた論文が、自分の論文に必要なの?」と疑問に思われるかもしれませんが、専門家によって書かれた論文や書籍を読むことは、卒業論文の完成度を決める重要な行程です。
たくさんある論文や書籍の中から自分が知りたい情報を探すのも一苦労なのですが、卒業論文には欠かせない作業なので頑張りましょう。
すでに行われた研究結果や、調査結果による事実を知る
論文執筆を始める前に、
- 過去にどのような研究がされてきたか
- どのような事実があるか
という専門家の意見を知ることから始めます。
また、専門家によって書かれた論文や書籍の一部を自分の論文に引用することで、自分の論文の信憑性を高めます。
ただ自分の意見や主張を伝えるだけよりも、
- 「専門家の〇〇さんも自身の論文の中でこのように述べています」
- 「過去の研究結果から、このような結果が分かっています。」
と専門家の主張や研究結果の事実もいっしょに書いてあるほうが、自分の主張の信頼度が上がる感じがしますよね?
どんな内容を引用するか決めるのも、卒業論文の執筆において重要な作業です。
文献は、ゼミの教授からおすすめしてもらったり、自分で論文検索をしたりして探します。
どの専攻分野であっても、卒業論文の完成までに5種類以上の書籍や論文を読むことになると思うのですが、日本語だけではなく英語で書かれた書籍や論文も読みます。
英語ネイティブスピーカーが書いた論文ですよ……想像するだけで難しそうじゃないですか?
実際、ひとつの文章がとても長かったり、どれが主語なのか分からなかったり、主語と述語が離れていたりと、あらゆる文法を駆使したやっかいな英文ばかり。
1文が2、3行にわたって書かれているものも多くあります。
でも、高校生で習った文法が身についていれば、だいたい読むことができました!
一つひとつの文法を追って読解していけば、意味を理解できるようになります。
それに、ほとんどの学生さんは自分の興味のあることについて調べていると思うので、好きなことに関する論文を英語で読んで知識が増えるって意外と楽しいですよ!
英語で書かれた論文を読むメリット
英語で書かれた論文や書籍を読むのは、日本語のものを読むより難しいし大変です。
しかし英語で論文を書くなら、事前に読む論文や書籍も英語のものを選んだ方が後々ラクになることが多いです。
論文に必要な単語や表現を覚えられる
記事の後半で詳しくお話ししますが、英語の論文では独特の表現があります。
会話で使うような表現ではない、かたい表現なので、最初は見慣れないかもしれません。
しかし、英語で書かれた論文や書籍を読んでいると、英語の論文でよく使われる表現をたくさん目にすることになるので自然とおぼえられます。
自分が論文を書くときにも、自然と論文独特の表現が思い浮かぶようになりました。
また、分野でよく使われる専門用語や英単語もおぼえることができます。
英語の文献は辞書で調べながら読み進めるので大変ですが、卒業論文を書くときになれば、専門用語の英単語も必要になります。
専門用語やそれに関連する英単語を知っておくと、執筆するときに自分で英単語に訳すことなくそのまま使えるので、ラクなだけではなく間違いを防ぐこともできるのです。
表現も単語も、論文を繰り返し読んでいるうちにおぼえてくるので、英語で論文を書き始めたときに少し知識があると助かります。
自分の卒業論文にそのまま引用できる
さきほども述べたように、専門家の論文や書籍は知識を得るだけでなく、論文の一部を自分の卒業論文に引用して信憑性を高めるためにも使います。
「自分の論文に引用したい」と思った部分を見つけた場合は、論文や書籍に書いてあるとおりに一語一句そのまま書き写すか、内容を自分で要約して自分の論文に書き入れます。
もし、日本語の文献で「これを自分の論文に引用したい」という文章を見つけ、英語で書く論文に引用する場合は、日本語の文章を自分で英訳しないといけません。
実際に私も日本語の書籍の一部を自分の論文に引用したので、自分で英訳した経験があります。
間違った文法や、ニュアンスの違う単語を使って書いてしまうと、著者の主張や事実と違うものになってしまうので、単語選びや表現はすごく気を付けていました。
わたしは引用したいと思った文章を安心して自分の論文に書きたかったので、積極的に英語の論文を探して読むようにしていました。
英語の文献を読むのは大変ですが、卒業論文を書く段階になったときに助かることが多いので、
文献5冊のうち3冊は英語で書かれたものにするとか、なるべく英語の文献を読んでおくといいですよ。
英語で書く|ただ英語で書けばいいわけじゃない
自分の考えを英語で表現しないといけないので、日本語で書くよりも大変です。
日記やメールではないので、ただ英作文をすればいいわけではないし、日本語で考えた文章をそのまま英訳すればいいわけでもありません。
でも、論文を書く際も高校生までに習った文法でほとんど書くことができました。
途中で例もあげながら解説しているのでぜひお読みください。
日本語で考えた文章を英訳するのはNG
論文を書く際は、「先に日本語で文章を考えたものを英文に訳していく」というやり方はほとんどしていません。
教授からも絶対にしないようにと言われていました。
繰り返しになりますが、英語論文には決まった表現があるため、日本語を英語に訳すだけでは論文にふさわしい表現にならないことがあるからです。
【例】主語にI(わたし)は使わない
といっても分かりづらいと思うので、実際に私の卒業論文から例をあげてみますね。
「これらのデータから〜ということがわかった」
という一文を書くとき、どう表現すればいいか予想できますか?
I found that 〜 from these data.
と考えた方がいらっしゃるかもしれません。
実際は、
What these data make clear is that 〜 .
「これらのデータが明らかにするのは〜ということ」と表現します。
英語の論文では、主語にIは使いません。(※weを主語にすることは可能です。)
しかし、さきほどの日本語の文章は
「(わたしは、)これらのデータから〜ということがわかった」
となり主語は「わたし」なので、そのまま英訳するとIから始まる文章になってしまい論文にふさわしい表現ではありません。
だから、日本語で考えた文章を英語に訳すのは推奨されていないのです。
もう少し例をあげますね。
論文の最初の方で「この論文では〜ということを調査する。」と
論文の目的を述べることがあります。
どう表現するか、考えられますか?
I explore 〜 in this paper.
I would like to examine 〜 in this paper.
ではありません。
The purpose of this paper is to examine 〜 .
「この論文の目的は、〜を調査することだ。」
と表現します。
今のは少し簡単でしたか?
では最後に、実験結果や、集まったデータを考察するときです。
「〜について考察してみる」はどうでしょう?
I consider 〜 . は、さきほどと同じで論文にはふさわしくないですよね。
では、Let us consider 〜 . はどうでしょう?
カジュアルな表現に見えますが、これはOKらしいです!私も実際に卒業論文で使った表現です。
ほかにも
First, 〜 are considered. (考察する対象が複数のとき)というのも私の論文の中にありました。
英語の論文では自分の目線で書くことができないので難しいかもしれませんが、文法や表現は、関係詞や受動態などの知っているものだと思うので、慣れてきたら自然に文章が思いつくようになるのではないでしょうか。
英語の論文にはきまりがたくさん
上記の例は、英語論文のきまりの中のほんの一部です。
ほかにも、同じ単語ばかり使わず同じ意味の違う単語(類義語)を使うとか、同じ意味でも論文向きの単語と論文向きではない単語があるとか、普段の英作文とは違うことがたくさんあります。
でも論文の書き方は授業や書籍で学ぶことができるので、教わったきまりを忘れないように気をつけながら書き進めましょう。
最初から英語で考えよう
英語の論文と聞くと難しい表現を想像するかもしれませんが、文法自体は高校生までに習ったものばかりなので、論文にふさわしい文法と単語を使って書いていくという感じです。
書き始める前に英語の論文を読んでいるので、よく使う表現方法も感覚でおぼえ始めていると思います。
自分でも驚いたのですが、頭の中でイメージしたことが自然と英語になって出てきて、「これを言うときはこの表現だな」と自然に選ぶことができる状態でした。
英語で何と言うのか単語が分からないものだけ辞書で調べるという感じです。
書くのと読むのを続けていくと自然な表現を覚えていくので、日本語で書いたものを英訳するのではなく、最初から英語で考えましょう。
卒業論文に向けた学校側のサポート
卒業論文を英語で書くことを選択できる大学であれば、学科や教授によるサポートを受けられるはずです。
日本語か英語か選べる学校でも、学科の学生から英語で卒業論文を書きたいといわれて指導を断ることはないと思います。
私の大学の形式をお伝えします。
論文演習授業
私の大学では4年生から卒業論文を書き始めたので、それまでの3年間は卒業論文の執筆に向けた論文演習授業がありました。
論文演習の授業は、わたしの大学では「必修」という、単位をもらわないと(受講して合格の評価をもらうこと)卒業できない授業に分類されています。
卒業するために必要な単位なので学科の全員が受講して、合格の基準に達する論文を完成させるよう努力していました。
1年生から3年生までの3年間をかけて、4年生での卒業論文にむけて学科の全員が執筆の練習をしてきているので、英語で読む力と書く力は入学時よりもはるかに向上したと思います。
1年生では英作文演習、2年生と3年生では論文作成演習という授業なのですが、特に2年生からの論文作成演習は卒業論文さながら。
テーマを決めて、先行研究の論文や書籍を読んで引用したり、自分で実験やデータを集めて解析したりしながら論文を書くというものでした。
長さは、本番の卒業論文の1/3から半分くらいの論文です。
ミニ卒業論文みたいなものを2年生の1年間をかけて1回、さらに3年生の1年間をかけてもう1回書いたので、卒業論文までには計2回、短い論文を作成しました。
3年間にわたる卒業論文に向けた授業のおかげで、4年生になってからいきなり卒業論文のすべてを勉強する、書き始めるという印象はありません。
文字のフォント(字の形)やサイズ、ページ番号の入れ方といったフォーマットも、卒業論文と同じように練習していました。
おかげで、実際に卒業論文を書くときはパソコンやワードの使い方が分からなくて困ることもありませんでした。
卒業論文の練習は入学直後から始まっていて、実際に論文も2回書いていたので、英語での卒業論文執筆に向けた体制は整っていたと思います。
論文作成に必須の本
英語で論文を書く際に必要なことが書いてある、学校から指定された本を一冊、学科の全員が購入しました。
論文は独特の表現方法がある上に、同じ表現を繰り返して使うことは好まれないという性質もあるので、論文独特の慣れない表現をいくつも使わなくてはいけません。
私たちが購入した論文作成のための本には「問題点を指摘する」や「付け加える」、「例をあげる」といった項目ごとに、複数の表現が記載されています。
自分が伝えたいことを英語にする際に、その中から表現を選んで英語の文章に落とし込んでいきます。
この本のおかげで、論文らしい文章ができあがりました。
教授との面談やゼミの授業
ゼミの時間は、一人ずつ順番に今取り組んでいる課題を発表すると、教授やゼミの友人が意見をくれるという形式でした。
自分に対するアドバイスもありがたいし、友人に対するアドバイスや飛び交う意見も勉強になることが多かったです。
また、ゼミの時間とは別に、教授が1対1の面談を定期的に用意してくれます。
ゼミのときよりも具体的な指導をしてもらえたり、書籍や論文を教えてくれました。
無理な設定ではない
枚数や文字数(英語の場合は単語数)は、ちょうどよい長さに設定されていると思いました。
一般的な英語の論文の構成のとおりに書けば、(仮説・先行研究・データ収集・結果解説・まとめなど)大学規定の長さを達成できると思います。
無理やり長く書こうとせずとも規定の長さになりましたし、それ以上に大幅にオーバーすることもありませんでした。
書こうと決めたことを書き進めたら自然とその長さに行き着く感じです。
もし足りなかったら事前に教授に相談すれば、書き加える内容を提案してもらえると思います。
書き始める前は「長いなあ。書き上げる自信がない。」と思っていたのですが、大丈夫でした。
英語で卒業論文を書いたふりかえり
英語で卒業論文を書くのは、たしかに日本語で書くよりも難しいことが多いかもしれませんが、日本語で卒業論文を書くのも大変だと思います。
日本語で論文を書いたことがないから比較できないだけでどっちも大変だろうなと思うので、英語じゃなく日本語で書けばよかったと思ったことはありません。
学科のみんなが卒業論文を書き上げて卒業できたので、できないことはないと思います。
でも英語が嫌いならおすすめはしません……
英語で卒業論文を書くことができる大学なら学科や教授のサポートの体制が整っているはずなので、ぜひ英語での卒業論文に挑戦してみてくださいね。
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